抗いの旅はまだ続く

赤かぶニュース No.220  2017年1月1日に朴保の文章が掲載されました。
文中の映画「抗い」  http://aragai-info.net/ は2月11日から一般上映が始まりました。

抗いの旅はまだ続く    朴保

1979年「広瀬友剛」でレコードデビューして、その翌年「朴保」としてゲリラ活動を始めて38年。お蔭様で様々な所へ呼んで頂き、唄って参りました。まだまだ勉強不足な私ですが、旅の途中、少しだけ書かせて頂きます。
百聞は一見にしかずと言いますが、まさに、旅に出て人に会い世の中を見聞するとはその通りだと思います。朴保と名乗った事で、多くの運動家の皆様に会い、サポートして頂き、行き方を学んできたつもりです。テレビやネットでも知られぬ事を目の当たりにする事もしばしばです。
22年前の阪神淡路震災の時には被災地に行き、歯を磨く水も不足する中、炊き出しの前で大きな声で力いっぱい、元気になってもらいたくて唄いましたが、アスベストを思いっきり吸いこんだようで、半年ほど苦しい思いをしました。
川内原発の前に立った時は、恐ろしい悪魔を目の前に足が竦む思いです。人間の欲が作り出した化け物をどうやって鎮めたらよいのか、天に祈る思いで唄い、夜は皆で「人を殺して金もうけ?!」と合唱しました。
沖縄の高江に行けば、ヘリパット建設に対し母も子を抱き座り込みをしていました。体制側の暴力がエスカレートする中、反対するのがいけないなら、言論の自由もへったくれもありません。

2016年11月末に試写会で「抗い」というドキュメンタリー映画を見ました。自ら「私は国賊、非国民の子」と語る主人公・林えいだい氏は82歳の記録作家、ジャーナリスト。太平洋戦争末期、朝鮮半島から多くの若者が強制連行されました。神主であった父親は、過酷な労働に耐えられず逃亡した朝鮮人をかばい日本の憲兵に連行され、厳しい拷問のせいで命を落とした。その父の遺志を継ぎ隠された事実を掘り起こし書き、撮り続ける姿に共感し感動しました。
私も訪れた事のある筑豊の風景や、そこで出会った人達の顔を思い出すと共に、どこにもその名は存在しないアリラン峠「筑豊アリラン」を作曲した頃の、熱い反骨精神が蘇る思いでした。権力に抗う、人権、平和への祈りがこの映画の中のメインテーマであり、反体制でなければジャーナリストとは言えず、表現者であるMusicianも同じであると、林先生に励まされたようです。「言いたくない。言わない。表面に出ない隠れた部分こそ問題なのだ」(林えいだい著より)

私の抗いの旅はまだ続きます。
皆さんも一緒に未来の子どもたち、新世代に何を伝えていくべきなのかを考え、行動する事が求められています。もし私たちが未来を諦めて一歩引いてしまえば、抗わなければ、世界が100歩1000歩と負の方向へ進んでしまうに間違いありません。
一緒に良い時代をつくりましょう。